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職場の方へ

 

赤ちゃんを亡くされたママやパパは、深い悲しみが癒えないまま、職場に復帰します。職場の周りの皆さんに知っておいてほしいことをご紹介します。

声かけ

赤ちゃんを亡くした後に職場復帰する際は、男性でも女性でも大変緊張しています。「周囲にどう説明しよう」「どんな顔をして出社すればよいのだろう」「どんな風に声をかけられるのだろう」などと不安と緊張でいっぱいです。

職場の雰囲気や関係性、相手の性格によって、対応は変わるので、これを言っておけば大丈夫、この対応マニュアルが良いと言えるものは残念ながらありません。しかし、気を付けたい言葉というものもいくつかあります。

たとえば、「大丈夫?」という言葉。第一声としてかけたくなる言葉ですが、「大丈夫?」と聞かれたら「大丈夫です」と答えるしかありません。そうすると、職場では大丈夫な自分を保とうと頑張りすぎるかもしれません。また、同僚には弱音は吐けないと壁を作ってしまう可能性もあります。

「次はきっと大丈夫だよ」という言葉もかけたくなりますが、次を考えられる状況でないことが多いので、できればこのような発言は控えていただきたいと思います。

流産について、「よくあることだよ」という言葉をかける方も多いですが、赤ちゃんは一人一人が大事なお子さんですので、できればこのような発言も控えていただきたいと思います。

普段通り、何もなかったように接してもらうのが良いという人もいらっしゃいますし、周囲から気を使われていることを苦痛に感じる方もいらっしゃいます。声を掛けられることが逆に相手の気持ちを辛くすることもありますので、もし声を掛ける場合でも「大変だったね。役に立てることがあったら言ってね。」と、体調が悪い時には仕事を手伝えることをお話しするくらいに留めることが相手の気持ちを楽にできるかもしれません。

また、上司だけが流産・死産などの状況を知っており、職場全員には通知しない場合もあります。できれば、復帰前に同僚に伝えてよいか、内緒にしたいのか本人の希望を確認できると良いでしょう。周囲が知らないために、「予定日はいつ?」「おなか、あんまり大きくならないね」「子どもは作らないの?」などの発言をしてしまうことがあるかもしれません。それらの発言を避けるために周囲にしってもらいたい人もいれば、それでも内緒にしたい人もいます。上司ひとりの判断ではなく、本人の希望に沿った対応をお願いします。

流産、死産、新生児死を経験した親は、妊娠中の方や乳幼児を養育している方と接することで精神的に不安定になる場合があります。もし、そのような不安について相談を受けた場合には、本人の希望を聞いていただいて、配置換え等も検討していただけるとありがたいです。

 

休暇

まず、労働者親から有給休暇の取得の希望があり、与えられた日数が残っているのであれば、会社は有給休暇の取得を拒否することができません。

また、有給休暇ではなく欠勤の場合でも、病院へ通院し、医師の治療を受けている状況で、3日以上連続で会社を休んだ場合、健康保険の私傷病手当に該当する可能性があります。本人がこのような制度を調べる精神状態ではないことも多いので、職場で該当するケースかフォローしていただけるとありがたいです。

初期流産の場合、数日間は無理は禁物です。手術を受けた場合は、退院から1週間後に術後の検診がありますので、その期間に労働者から有給休暇の希望があることが多いと思いますが、与えられた有給休暇の日数の範囲であれば、休むことが認められています。会社からも十分休養するよう言っていただけると気持ちが楽になると思います。

通常の出産の場合、産前産後休暇が認められておりますが、妊娠4か月(妊娠85日)以降での死産や人工中絶、新生児死となった場合も、産後休暇は適用されます。就業規則への記載の有無にかかわらず、また本人が出社を希望した場合でも、会社側は就業させてはいけません。違反した場合は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金となっています。(労働基準法第65条参照)

流産・死産・新生児死後の親の精神状態は不安定で、休暇が明けても精神状態によっては就業が難しい場合もあります。有給休暇の希望があった場合には、与えられた有給休暇の日数の範囲内であれば休むことが認められています。有給休暇を使い切っても、労働者の精神的状況が改善されない場合、産業カウンセラーへの相談や、医師の受診を促すことも場合によっては必要です。欠勤が続く場合には、傷病手当のことを本人に案内していただけるとありがたいです。

 

作成協力

  • 東谷良子様(弁護士)