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ご家族へのメッセージ
ご家族の皆さまへ
子どもを亡くすということ。親にとって、これほど悲しいことはありません。それは流産や死産で赤ちゃんを亡くされたご両親にとっても同じです。悲しみに暮れるママ・パパを見て、周りのご家族も心を痛めていらっしゃることと思います。
当会では、深い悲しみ、苦しみに直面しているパパ、祖父母の方、上のお子さんに対しても、少しでもお手伝いができればと思っています。
パパへ
子どもを失い、悲しみのどん底にいるママを支えているパパも、本当につらい気持ちでいらっしゃることと思います。パパの場合は、悲しみの直後から仕事に戻らなくてはいけないことが多く、自分の気持ちに向き合う時間もなく、必死で過ごされているのではないでしょうか?
泣きたいけど、悲しいけど、そんなこと落ち込んでいるママの前で弱音は吐けない・・・そう思っていませんか?
また、流産・死産後いつまでたっても元気にならないママにいらだちを覚え、つい厳しい言葉をかけてしまって後悔したりしていませんか?
ママの気持ちを知る
「妊娠を知った日から女性はママになる」と言われています。ママは妊娠を知った日から母性が芽生え、母としての生活を始めていました。母としてお腹の子供に語りかけ、お腹をさすって幸せを感じていました。それなのに・・・。大事な赤ちゃんが突然いなくなったのです。自分の体の中にいたはずの命を感じることができない。そのショックの大きさはパパにも理解していただけるでしょう。
医師からの突然の宣告。ママはその事実を受け止める時間もなく、先生から赤ちゃんの命が助からないと伝えられ、その後の手術・分娩について説明されるのです。「これは夢だ。夢に違いない・・・」そう思いながら、手術台や分娩台に登るのです。手術室の明かり、看護師さんの会話・・・すべてが非現実的な世界で起こっていると感じながら、産声をあげてくれない我が子の出産に立ち向かうのです。まだ、「赤ちゃんがいなくなる」という事実を受け止めていないのにもかかわらず、ママの気持ちとは無関係なところで、現実は進んでいくのです。
手術・分娩後も、ママはずっと泣いたままで、パパはどうすればいいか分からず困ったのではないでしょうか? かけてあげる言葉も見つからず、どうすればいいか分からない・・・。でも、パパが側にいてくれるだけでママは安心するのです。どんな言葉をかけても、涙は止まりません。側にいて、手を握ってほしい、抱きしめてほしい・・・。残念だけど、それ以上にできることは、この時のパパにはありません。
おうちに帰っても、ママは泣いたままです。パパは焦ります。このまま笑顔が見られなかったらどうしよう。いつもの素敵な奥さんに戻らなかったら・・・。不安と焦りで、言葉数が増えたり、慣れない料理で喜ばそうとしたり、プレゼントを買ってきたり。それでもママの態度がかわらないと、不安以上にいらだちを覚えるのではありませんか?
ママに早く元気になってほしい、元に戻ってほしいと願うあまりに、「いつまで泣いているんだ」「また赤ちゃんできるから」「悲しいのはお前だけじゃない」などの言葉が、出てしまうかもしれません。パパはママを励ますつもりでかけた言葉ですが、ママは、「パパはもう悲しくないんだ」「パパは、泣いている自分は嫌なんだ」と誤解したり、「次の子ができても、あの子の代わりにはならないのに」と、自分の悲しみを理解してもらえないことに傷付くことが多いのです。
もしかして、もうパパの前では涙を見せていないかもしれません。しかし、数カ月経っても、1年経っても、悲しみがなくなることはありません。ママは、表面上は元気に見えても、愛する子供を失った悲しみを胸に抱えて生活をしています。兄弟姉妹・友人の妊娠・出産のお知らせに落ち込んだり、街ですれ違った親子を見て涙がでたり・・・。生活のちょっとしたきっかけで、悲しみが押し寄せてきたり、つらい体験を思い出したりします。
パパの言葉で、元気になることもありますが、流産・死産の悲しみはママ自身が乗り越えるしかありません。その方法は人それぞれ。思いっきり泣く、同じ体験をした人の話を聞く、インターネットで同じ悲しみを抱える仲間を見つける・・・などなど。心の整理には数ヶ月〜年単位の時間がかかります。焦ることなく、ママのペースでゆっくりと心を癒やしていけるように、見守ってください。
そして、ママが我が子の話をしたいと思った時・・・耳を傾けてください。
パパにできること
〈流産・死産の危険があり、ママが情緒不安定な場合〉
★ママを抱きしめてあげてください。そして側にいてあげてください。★病院へ行くときも可能ならばママに付き添ってあげてください。
★おなかの赤ちゃんの生命力を信じてあげましょう。
★ママが安静にできるように、家事や育児などはパパや周囲の人で分担しましょう。
〈流産・死産直後〉
★ただ側にいてください。手を握ったり、抱きしめてあげたり。一緒にいてあげることが大切です。★ママに自由に感情表現をさせてあげてください。泣いたり叫んだり、我慢しないですむように、入院中はできるだけ個室での対応をお願いしてみましょう。
★ママの話を聞いてあげましょう。ママは不安や悲しみ、怒りなどの感情がいっぱいです。人に話すことで落ち着くこともあります。ママの心の中だけに閉じ込めないように、気持ちを話すよう勧めてみてください。
★パパもできるだけ付き添い、悲しみを二人で分かち合いましょう。パパも悲しんでいることをママに伝えましょう。二人で悲しみを共有できれば、より夫婦の絆も強くなります。
★なぜ、赤ちゃんが亡くなったのか、ママを責めるような言葉をかけてしまわないように気をつけて下さい。ママは赤ちゃんを守れなかった自分を責めています。ママを温かく包んであげてください。
〈しばらくして〉
★二人でこれからの人生や楽しみについて話し合いましょう。夫婦で楽しめる趣味などができたらいいですね。★性生活についても話し合いましょう。まずはママの体がしっかり回復することを待ちましょう。深い悲しみの中にいる時期は、性生活自体に苦痛を感じるママもいますので、ママが無理をしていないか、気持ちを聞いてみましょう。
★次の妊娠・出産に対して、ママは強い不安や恐怖感をもつこともありますし、逆に、早く赤ちゃんが欲しい、あの子にまた戻ってきてほしいと強く願い、次の妊娠を焦る場合もあります。次の子どもについて、お互いにどう考えるのか、ゆっくり話し合い、気持ちを共有していきましょう。
★不妊治療をする決心をしたママの場合、可能な限り治療に協力してください。
★周囲に亡くなった赤ちゃんのことを話していない場合、ご家族やお友達にママを傷付ける言動があるかもしれません。周囲の人にどのように対応するか、ママと話し合ってみてください。パパから周囲の人に、必要に応じて状況を話したり、当分二人でやっていくつもりだと伝えることで、ママの気持ちが楽になるかもしれません。
〈一番大切なこと〉
パパがママのためにしてあげられること、それは側にいることです。抱きしめてあげたり、手を握ったり、不安定なママの心を支えてあげられるのはパパの存在です。そして会話を大切にしましょう。ママの気持ちを聞くだけでなく、自分の気持ちも伝えること。これからも、ずっと一緒に生きていくパートナーです。お互いをいたわり、理解し、支えあって生きていきましょう。
泣かないで我慢しているパパへ
流産・死産といえば、ママの心に注目しがちですが、大切な赤ちゃんを失い、パパもママと同じように、深い悲しみや怒り、罪悪感など、様々な感情を感じるでしょう。
周囲の人は、ママの悲しみには気づかいを示すものの、パパも同じように悲しんでいることを忘れてしまい、「奥さんをしっかり支えてあげて」などと、パパには、当初からママのサポート役を期待する声かけをしがちです。
また、パパ自身も、「男は強くなくては」「ママを支えなくてはいけないのだから、泣いてなんかいられない」と思い込んでいるかもしれません。
でも、大切な我が子を亡くして悲しみ、涙を流すのは、親として当たり前の、人として自然なことではないでしょうか?女だから、男だから、ということは関係ないのです。泣くことは「こころが弱い」「恥ずかしい」ことではなく、我が子を愛しているからこそ、失ったことを深く悲しみ、涙を流すのです。
泣くのを我慢しようとすると、赤ちゃんの話題も避けることになってしまいます。早い時期から日常生活に戻り、涙を見せず、赤ちゃんのことにも触れないパパの様子を見て、ママは「パパはもう悲しくないのだろうか」と誤解し、自分の悲しみを打ち明けられなくなってしまいます。
ママと一緒に泣いて良いのだと思います。ご自身の悲しみをママに打ち明けてみてください。初めて見るパパの涙に、ママは少しびっくりするかもしれませんが、「パパも私と同じように悲しいんだ」と少し安心し、パパと支えあいながら、悲しみに向き合っていこうと思えるでしょう。
一緒に供養に行ったり、赤ちゃんを想い、木を植えてみるなど、二人でできることがあれば気持ちを共有する良い機会になるかもしれませんね。
小さなお兄さん、お姉さんへ 〜上のお子さんへの関わり方〜
上のお子さんがいる場合、赤ちゃんのことをどのように伝えればよいのか、上のお子さんにどのように関わっていけばよいのか、ご両親や周囲の方も悩まれることでしょう。
下記のような相談は、多くのご両親から寄せられます。
- 「亡くなった赤ちゃんに会わせるかどうか、会ったらショックを受けるのではないか心配です」
- 「赤ちゃんが亡くなったことを、どのように説明すればよいのでしょうか?」
- 「赤ちゃんが亡くなった後、上の子が赤ちゃん返りをしたようにわがままになって、落ち着きがありません。どう接したらよいのでしょうか?」
上のお子さんやご両親の状況はそれぞれ違うので、このような相談に一通りの答えはありませんが、下記のようなポイントを参考にして、お子さんへの関わり方を考えてみて下さい。
上のお子さんに接するときの、親としての心がまえ
- 子どもも悲しむ
子どもも「大切な赤ちゃん」の不在や親の悲しみを肌で感じ、その子なりの「悲嘆(グリーフ)」を体験します。年齢やおかれている状況はひとりひとり違うので、悲しみの表現の仕方もひとりひとり異なります。突然の出来事を十分に理解できず、何もなかったようにふるまう子もいますが、「泣かないから、悲しんでいない」というわけではないのです。
子どもも親と同じように、初めての体験に強いとまどい、不安を感じています。ご自身の悲しみが強く、上のお子さんを気にかける余裕がないこともあると思いますが、周りの方の助けもかりながら、上のお子さんに向き合っていきましょう。
- 子どもも本当のことを知りたがっている
「子どもは幼く、死を理解することはできないから、死について説明する必要はない」と思うのは間違いです。
子どもは、赤ちゃんの死についてたくさんの疑問をもちます。
・「赤ちゃんはなんで死んじゃったの?」「死んだらどうなるの?」
・「お母さんやお父さんも死ぬの?」「ぼく(私)も同じように死ぬの?」
・「ぼく(私)が赤ちゃんなんていらないって言ったから、死んじゃったの?」
赤ちゃんとお別れして間もない時期に、子どもからのこういった質問に答えるのは、とてもつらいことかもしれません。でも上のお子さんにとっても、大切な弟妹が突然いなくなってしまったことは大きな出来事であり、何が起きたのかを理解できないと、漠然とした不安や緊張をかかえこむことになりかねません。
- 子どもの理解に合わせて、死について分かりやすく伝える
子どもは、その子の成長・発達に応じて、死への理解を徐々に深めていきます。
5歳未満の場合、死について正しい認識をもつことは難しく、「人間は死んでも生き返る」「死んだあともどこかで生きている」「また帰ってきて会える」と考えていることが多いそうです。
幼い子どもに対して、「赤ちゃんはお空に行ってしまったのよ」という説明をすることも多いと思いますが、子どもはその表現をそのまま受け止め、「赤ちゃんはお空で遊んでいて、そのうち帰ってくる、また遊べる」と思っていて、ふとした時に「赤ちゃんはいつ帰ってくるの?」と尋ねたりします。
子どもの成長に合わせて、「死」がどのようなものなのか、そして大切な「命」について、少しずつ伝えていきましょう。命や死についてテーマにした絵本を一緒に読むのもよい方法です。
5歳〜9歳くらいになると、死ぬと再び生き返ることはなく、生きているものはみな死ぬ運命にあることを理解するようになります。でも、この年齢の子どもは、自分もいずれ死ぬのだ、とまで考えることは難しいそうです。
赤ちゃんの死に接して、自分も死ぬのではないかと強い不安をかかえる子どももいます。子どもの不安にしっかり耳を傾け、「そんな心配はしなくても大丈夫。あなたは健康で、どこも悪いところはないからね。」などと、くり返し話してあげましょう。
また、まだ十分に死を理解していない場合、赤ちゃんの死を自分のせいだと思い込み、それを周りにも言えず、悩むことがあります。赤ちゃんの死は誰のせいでもなく、上のお子さんのせいでもないことを繰り返し話してあげましょう。
10歳くらいになると、医学的なこともかなり理解し、現実的な死の概念をもてるようになると言われています。
子どもからの質問には、あたたかな雰囲気で、ゆっくりとわかりやすい言葉で答えてあげてください。同じことを何回も質問することがありますが、子どもが死を受け止めるための大切な過程ですから、根気よく答えてあげましょう。自分だけでは対応がむずかしいと感じるときには、周囲のご家族や、幼稚園、学校の先生などに相談してみるのも1つの方法です。
- 親も悲しみを素直に表現する
赤ちゃんの話をしている途中で涙が出てきたら、涙をがまんしなくても大丈夫です。「お母さんは(お父さんは)、赤ちゃんがいなくなったのがとても悲しくて、寂しいんだ」「しばらく、たくさん泣いちゃうかもしれないけれど、あなたのせいで泣いているんじゃないよ、少しずつ元気になるからね」と説明してあげると、お子さんも安心できるでしょう。
ご両親が悲しむ姿を見て、お子さんは、「ママたちは赤ちゃんを大切に思っているんだ」「大切な人がいなくなったら大人も悲しくて泣くんだ、自分も悲しいときには我慢せずに泣いていいんだ、泣くのは恥ずかしいことではないんだ」ということを学びます。
- 親だけで対応がむずかしいときには、ほかに相談してみる
赤ちゃんを亡くしてしばらくの間は、ご両親それぞれに余裕がなく、上のお子さんに気持ちを向けられず、そんな自分に自己嫌悪されるママたちも多いようです。
上のお子さんにとって、これまで通り、思いきり遊んだり、日常を楽しむことはとても大切なことですが、すべてをご両親でかかえこまずに、周りのご家族やご友人に、上のお子さんを外に連れ出してもらったり、遊び相手をしてもらうようにお願いするのも1つの方法です。周りの大人に、このページを読んでもらい、上のお子さんへの関わりに配慮してもらうように、お願いしてもよいでしょう。
*このページは、下記の図書、ホームページを参考にして作成しました。
参考図書 :「死ぬってどういうこと?」 アール・A・グロルマン著
「死別を体験した子どもによりそう」 西田正弘 高橋聡美著
参考になるホームページ :子どものグリーフ・ケア https://tenshi-children.jp/contents-t/griefcare/
ご両親(おじいちゃん・おばあちゃん)へ
誕生を楽しみにしていたお孫さんがお亡くなりになり、おじいちゃん、おばあちゃんもさぞ心を痛めていらっしゃると思います。
お孫さんを亡くされた悲しみとともに、ご自身の娘さんや息子さんが苦しまれている姿を見ることは、親にとって大変つらいことだと思います。おじいちゃんや、おばあちゃんも赤ちゃんを大切に思っていることを伝えてあげましょう。そして、いつまでも孫のお一人として、亡くなった赤ちゃんを想ってあげてください。
赤ちゃんとの対面、思い出の品作り、葬儀や供養の方法など、ご自身がお孫さんのためにしてあげたいと思っていることはたくさんあると思います。けれども、まずは息子さん・娘さんが望む方法を見守ってあげましょう。それが、お孫さんにとって一番嬉しい方法なのです。
ママが傷付く言葉ママを元気つけるために言った言葉が、ママを傷つけることもあります。個人によって受け止め方は違いますが、極力避けたい言葉を紹介します。
- 「また子どもならできるよ」
今回の子と次の子はまったく別の人間です。次に赤ちゃんが生まれればいいわけではありません。
- 「早いうちでよかったよ」
妊娠初期だからといって悲しみに大小はありません。
- 「いつまで泣いてるの」
ママだって泣いてばかりではいけないと思っています。でも、今は見守ってあげてください。
- 「つらいのはお前だけじゃない」
そんなこと分かっています。でも、つらいのです。
- 「原因は何なの?」
ママの体、ママの生活スタイルに問題があったかのように受け止めるママもいます。
作成協力
- 菅原知希様