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流産・死産と診断されたら

流産・死産と診断されたら

ご自身の体の状態、赤ちゃんの状況を産婦人科の医師によく聞きましょう。状況が分からないまま、処置を受けると後悔することがあるかもしれません。疑問や不安なことを正直に、医師、助産師、看護師に伝え、納得できるまで説明を受けましょう。

 

手術をうける場合

流産の手術は、

  1. おなかの中で亡くなっている赤ちゃんを出してあげる手術
  2. おなかの外に出ようとしている赤ちゃんや胎盤を外に出してあげる手術
  3. 既に赤ちゃんは出ているが、胎盤などが残っている可能性がある時に子宮の中をきれいにする手術

 

があります。自分がどのような手術を受けるのか、医師に説明してもらいましょう。納得した上で手術を受けましょう。

おなかの中で赤ちゃんが亡くなっている場合、手術の準備として子宮の出口(子宮口)が開きやすいようにラミナリア、ダイラパン、バルーンなどを子宮口に入れる処置をする場合があります。これが刺激となって陣痛のように子宮の筋肉が収縮し、下腹に痛みを感じることもあります。その後、子宮の入り口を器械で拡げて、子宮の中の赤ちゃんや胎盤を外に出す手術を行います。

また、子宮外妊娠や胞状奇胎の場合は手術が違います。子宮外妊娠の多くは卵管に赤ちゃんがいますので、全身麻酔をかけて腹腔鏡、あるいは、開腹して卵管切除などの手術を行う必要があります。胞状奇胎の場合は流産と同じ手術が行われますが、1週間後に、2回目の手術が必要です。検査や点滴治療などが行われることもあります。

手術はすべて麻酔が必要です。麻酔の種類などは病状、患者さんの体質などによって変わりますので、どのような麻酔(全身麻酔・静脈麻酔、マスク麻酔など)をするか事前に聞きましょう。

 

死産の場合

ご自身の体の状態、赤ちゃんの状況を産婦人科の医師によく聞きましょう。特に赤ちゃんの亡くなった理由について、疑問に思っていること、不安なことを正直に医師や看護師、助産師に伝え、納得のいく説明を受けましょう。

通常は人工的に出産をすすめる処置が行われます。子宮の出口(子宮口)が開いていない場合、開きやすくして赤ちゃんがスムーズに出られるようにダイラパン、ラミナリア、バルーンなどを子宮口に入れる処置をする必要があります。陣痛(子宮収縮)をおこすために、錠剤を飲んだり、注射・点滴をしたりして子宮を収縮させます。陣痛がついてくれば、子宮口は陣痛とともに少しずつ開きますが、その週数により、数cmから最大10cmほど開き、赤ちゃんが出られるほどになったら破水させ、赤ちゃんを産みます。その後、胎盤をだして収縮が良いことを確認して終了となります。

お母さんの体の状態によっては、たとえ死産であっても、帝王切開手術が行われることもあります。この場合、緊急を要することが多く、状況を理解できないうちに手術が行われることもあるかもしれません。手術は腰椎麻酔か全身麻酔をかけて行われ、お腹を切って赤ちゃんを出してあげることになります。術後は7日〜10日間程度入院が必要です。赤ちゃんをちゃんと産んであげられなかった・・・と自分を責めることはありません。どんなかたちであれ、あなたは母親として赤ちゃんをこの世に産んであげたのです。

 

流産・死産の基礎知識

流産の定義

妊娠22未満で妊娠が終わる(赤ちゃんが亡くなる)ことを流産と呼びます。妊娠12週未満の流産を早期流産(初期流産)、妊娠12週以上22週未満を後期流産といいます。超早期までを含めれば、全妊娠の30〜50%の確率で流産は発生するといわれています。

流産の種類と症状

出血、おなかの痛みなどの症状は人によって様々です。少しでもおかしいと感じたら、真夜中であれ、仕事中であれ、早急に病院へ連絡を取ってください。ほとんどの病院は「出血やおなかの張り、痛みがある」と言えば、直ぐに病院へ来るように指示されると思います。素人だけで判断しないで、「まずは病院へ一報」を心がけてください。

切迫流産

赤ちゃんは子宮の中で生きています。赤ちゃんの心拍動が確認できれば、出血やおなかの張りを感じても、妊娠を継続することができます。医師の指示に従い、安静にしていましょう。この時期を乗り越えれば、赤ちゃんに会える日も近づきます。

  • [症状]

出血とお腹の張り、人によってはおなかの痛みを感じる場合もあります。

  • [対処方法]

安静にしてください。仕事をしているママはお休みしましょう。家事もご家族に協力してもらって、できるだけベッドで横になっていてください。薬を飲んだり、ホルモン注射を打つ場合もあります。痛み、出血がひどい場合は入院することもあります。

稽留流産

出血やお腹の張りといった自覚症状がないにもかかわらず、子宮内で流産してしまっている状態です。

  • [症状]

自覚症状はありません。赤ちゃんは育っておらず、心拍動も確認できません。

  • [対処方法]

残念ですが、心拍が復活することはありません。流産の手術が必要です。強い希望がある場合には、相談の上、自然に出血して流産するまで待つという場合もあります。

進行流産

子宮の出口が開き、赤ちゃんが外へ出ようと動き始めます。

  • [症状]

大量の出血と強いおなかの痛みが続きます。

  • [対処方法]

流産の手術を行います。

不全流産

赤ちゃんや胎盤などの一部が子宮内に残っている状態です。

  • [症状]

少量であったり多量であったりすることはありますが、いずれ出血とおなかの痛みが続きます。

  • [対処方法]

流産の手術を行います。

完全流産

赤ちゃんと胎盤などの附属物が全て子宮の外へ出てしまった状態です。

  • [症状]

出血の中に血の塊が確認できます。赤ちゃんや胎盤などの附属物が血液の塊となって外にでた状態です。軽いおなかの痛みがあります。

  • [対処方法]

子宮内に内容物が残っていれば手術を行いますが、残っていなければ手術を行いません。

胞状奇胎

受精卵は細胞分裂を繰り返しながら絨毛組織を増やしていきます。この絨毛組織は赤ちゃんへ栄養を送る胎盤になります。しかしながら、絨毛組織が異常に増殖し続け、子宮内に水泡状の粒になって充満する症状を胞状奇胎といいます。

  • [症状]

少量の出血と人によってはおなかの痛みを感じます。

  • [対処方法]

手術を行います。流産の手術と同じですが、1週間ごとに、2回手術をします。また、症状によって検査や点滴治療が行われる場合もあります。

子宮外妊娠

受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまった状態を子宮外妊娠といいます。たとえ着床していても赤ちゃんが育つスペースがなかったり、着床した部分が破裂する危険性がありますので手術することになります。

  • [症状]

人によっては出血やおなかの痛みがあります。

  • [対処方法]

子宮外妊娠の手術を行います。受精卵が卵管に着床した場合は卵管部分を切除する手術を行います。

 

流産の原因

ここに記載された原因以外にも流産の原因は存在します。

ご自分の妊娠に不安がある場合、流産の原因に疑問が残る場合は、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。

早期流産(妊娠12週未満の流産)

  • 原因1 赤ちゃん側の問題
    受精卵の異常(染色体の異常など)、胎児附属物の異常、多胎妊娠
  • 原因2 ママ側の問題
    子宮の異常(子宮筋腫、子宮奇形、子宮頸管無力症など)、卵巣機能の異常、染色体の異常、感染症、その他の疾患
  • 原因3 パパ側の問題
    染色体の異常、精子の異常
  • 原因4 夫婦間の問題
    免疫異常(HLA適合性など)、血液型不適合

 

後期流産 妊娠12週以降22週未満の流産

  • 原因1 感染症
  • 原因2 子宮の異常(子宮筋腫、子宮奇形、子宮頸管無力症など)
  • 原因3 多胎妊娠
  • 原因4 羊水過多

 

習慣流産 3回以上連続して起こる流産

  • 原因1 子宮の異常(子宮奇形、子宮膣癒着など)
  • 原因2 夫婦間の免疫異常

 

死産の定義

医学的には、22週以後における分娩において、分娩直後の心拍動、随意筋の運動及び呼吸のいずれもみられない場合。つまり、子宮内あるいは分娩中に赤ちゃんが亡くなり、亡くなった赤ちゃんを出産することを死産と呼びます。しかし、日本の法的な手続き上は、12週以降に胎児が亡くなった場合に死産届を出し、火葬することを義務付けており、法的には12週以降が死産と定義づけられています。

また、12~22週未満において、母胎内で胎児が生存しているものの、胎児の重篤な疾患や母体側の要因のため、人工的処置(胎児又は付属物に対する措置及び陣痛促進剤の使用)を加えたことにより死産に至った場合を人工死産と呼んでいます。

 

死産の原因として考えられるもの

ママの病気が赤ちゃんに影響した場合

ママの感染症や寄生虫症など、ママの高血圧障害、ママの腎・尿路疾患など、その他の病気

ママの妊娠合併症が赤ちゃんに影響した場合

頚管無力症、羊水過少、前期破水、胎位異常、その他の妊娠合併症

胎盤・臍帯及び卵膜の合併症が赤ちゃんに影響した場合

胎盤剥離、前置胎盤、絨毛羊膜炎、臍帯脱出、その他の臍帯圧迫など

原因不明

赤ちゃんの死因は解剖してみないと分からない場合がほとんどです。
解剖を希望されないご家族が多いため、原因不明となる事も多いようです。

赤ちゃん自身の先天性異常や発育異常の場合

赤ちゃん自身の先天性異常

 

*ここに記載された原因以外にも死産の原因は存在します。ご自分の妊娠に不安がある場合、死産の原因に疑問が残る場合は、産婦人科医に相談しましょう。

 

死産の原因と症例

死産の原因は様々で、多くの場合は原因不明として処理されることも多いのが現状です。ここでは、代表的な症例を説明します。

胎盤剥離(正式名:常位胎盤早期剥離)

胎盤は子宮の壁に張り付いていて、へその緒を通して赤ちゃんに酸素と栄養を供給しています。本来、胎盤は出産後に自然に剥がれ、排泄されます。これが後産と呼ばれるものです。ところが、赤ちゃんがおなかにいるにもかかわらず、先に胎盤が剥がれてしまう症状を胎盤剥離といいます。胎盤剥離が始まると、赤ちゃんに酸素や栄養が送られず、赤ちゃんは酸欠状態になります。

また、胎盤が子宮から剥がれ落ちると、子宮の壁から出血し、「胎盤後血腫」という血の塊が子宮内でできます。

この血腫により、ママの体も血液が固まりにくくなる病気を引き起こし、大量出血など、生命の危機に直面することもあります。

胎盤剥離は妊婦300人に1人の割合で発生しています。赤ちゃんが助かることもありますが、胎内にいるときに低酸素状態になるため、脳に障害が残ることもあります。

  • 原因

妊娠高血圧症候群や羊水過多、多胎を原因とする場合もありますが、順調に妊娠を継続しているママにも起こり、多くは原因不明のままです。喫煙している妊婦さんには明らかに多いことがわかっています。

  • 症状

・腹部の硬直、腹痛
・出血がある場合もある
・胎動の減少・消滅

  • 予防

これといった予防策がないのが現状です。胎動が少なくなった、お腹が張ってきたなど、いつもと違うと感じたら、直ぐに診察を受けてください。

 

子宮頚管無力症

子宮頸管というのは子宮の出口にあたる部分です。妊娠中、子宮頸管は閉じていて、子宮の中の赤ちゃんを支えているのですが、稀にこの部分が開いて流産や早産になってしまう場合があります。このような症状を「頸管無力症」といいます。

通常、流・早産の徴候(不正出血や陣痛様の腹痛など)を自覚しないままに子宮口が開いてしまい、胎児娩出に至ってしまいます。事前に内診や経膣式超音波で頸管無力症を診断できることもありますが、ほとんどの場合、子宮口開大が進行してから発見されることが多く、未然に予防することは困難です。

  • 原因

頸管無力症の原因としては、人工妊娠中絶により頸管の裂傷が瘢痕化することや、円錐切除術後などがありますが、原因不明である場合がかなり多いようです。

  • 予防・治療

頸管無力症の治療には頸管縫縮術(シロッカー手術、マクドナルド手術)が行われます。子宮頸管をテフロンテープなどで結ぶという方法で、妊娠末期まで無事に経過したら抜糸を行います。

子宮頸管がかなり開いている状況では、頸管縫縮術を行っても防止できない場合が多いのですが、以前に頸管無力症による流・早産の経歴のあるママの場合には妊娠初期~中期にあらかじめ頸管縫縮術を行っておくことは効果的な予防になります。

羊水過少

羊水の量が異常に少ない状態を「羊水過少」といいます。一般的に羊水量が100ml以下の場合に羊水過少を診断されます。羊水が減少すると、臍帯が圧迫され胎児仮死状態になることがあります。

  • 原因

原因の多くは破水による羊水の減少です(前期破水)。 それ以外の原因としては、胎児側の病気や疾患が考えられます。特に尿路系の器官の障害や発育の問題が考えられます。-尿路系の疾患(先天性異常)、尿路閉鎖、腎臓の発育不全など。 また、胎盤循環不全の兆候であることもあり、胎児発育遅延などの場合もあります。

  • 治療

胎児の先天性異常による羊水過少の場合は治療が困難。また、胎児発育遅延などが見受けられる場合は帝王切開を行うこともあります。破水による羊水過少で妊娠の継続が見込まれる場合には人工羊水を補充することもありますが、全ての場合において有効な方法ではありません。

 

  • ここに記載された原因以外にも流産・死産の原因は存在します。また、全ての時期についてはっきりしているのは、妊娠した女性がたばこを吸っている場合、流産、死産、新生児死亡の率が上昇します。間接喫煙でも同様です。ご自分の妊娠に不安がある場合、流産死産の原因に疑問が残る場合は、産婦人科医に相談しましょう。

 

  • 原因の追究には赤ちゃんの解剖が必要になってきます。辛い思いをした我が子をこれ以上苦しめたくない・・・。当然のことですよね。原因究明がママの心を救うきっかけになったり、赤ちゃんへの弔いになると考えるご両親もいらっしゃいます。夫婦でじっくり話し合ってくださいね。

作成協力

  • 岩手県立二戸病院 産婦人科長 秋元 義弘先生
  • 慶応義塾大学 看護医療学部 名誉教授 竹ノ上ケイ子先生

参考サイト