HOME > 私は初めての妊娠で36週と3日で原因不明での死産経験があります。もう6年も前の事なのに急に夜眠れないほどの自責の念が強くなり不眠症におちいる事があります。自責の念を解消するにはどうすればいいのでしょうか?

私は初めての妊娠で36週と3日で原因不明での死産経験があります。もう6年も前の事なのに急に夜眠れないほどの自責の念が強くなり不眠症におちいる事があります。自責の念を解消するにはどうすればいいのでしょうか?

【 ご相談内容 】

私は初めての妊娠で36週と3日で原因不明での死産経験があります。
13時間の普通分娩の上産声をあげない時間は今でも忘れられないトラウマになっています。
当時は泣く事ばかりで、病院からポコズママの会の冊子を渡されましたが、自分はメンタル強いから大丈夫だと連絡も相談もせず泣いてすごずばかりで・・・

そのまま次に子供を授かってから妊婦生活が心配不安が強く誰にもいえず10か月過ごしました
現在は2人の子供を授かり幸せに過ごしており、死産経験をした事で今の何気ない日常がとても幸せに感じます
幸い育児が大変だったので、考えこむ事もなく、自分はもう完全に立ち直った、時が解決してくれたと思っておりました
ところが、育児がだんだん落ち着いてから一人の時間も増えていく中で、ふっと考えこむ事がおおくなり、もう6年も前の事なのに急に夜眠れないほどの自責の念が強くなり不眠症におちいる事があります

もっと医療が発展して死産原因がわかるようになってほしい
せめて普通分娩じゃなく無痛分娩がよかったな
今後死産する人には万全なメンタルケアと無痛分娩窓口を作ってくれないかなとか
両親学級で仲良くなった妊婦さんと顔を合わせるのがきつかったなせめてとおいとおい部屋にしてほしかったな
まるで腫物にさわるみたいに、なかった事にされるのは辛かった
私があの時プールに入ったのが悪かったんだきっと
きっと罰があったたんだとか
虐待のニュースをみる度に腹がたって仕方なかったり
あの子を助けられなかったかわりに誰かの命を助けたら少しは楽になるのかなとドナー登録しようと思ったり

立ち直ったはずなのに急に考えこむと眠れずに辛くなります
自責の念を解消するにはどうすればいいのでしょうか?

【 回答 】

ハコちゃんさん、メール拝読致しました。

ハコちゃんさんは、これまで、本当にがんばってこられましたね。
つらくてもこれまでがんばって、二人のお子さんを育ててこられましたね。

一般に、死産をして、この経験に強いとか乗り越えられるという人は、 多くはありません。死産の経験を人に話すことをあまりしないので、他の人のつらさがどのくらいか、わからないのですね。このときに誰かに話ができるとよいのですが・・・

自責の念も、流死産のようなつらい経験(トラウマ体験)をしたあとには比較的多く見られることです。

なかなか日本は、自分のつらさを話すこと自体、少ないのかもしれません。
あまりにつらくて、助けを求められず、がんばりすぎてしまうために、人によっては、アルコールに頼ったり、子どもに暴力をふるったりしてしまうこともあります。

それだけつらい経験なのに、ハコちゃんさんは、本当にこれまでがんばってこられたんですよね。どうかご自分をほめてあげて下さい。

ご自分に少しだけ、優しく接してみることも、ときには良いのかもしれません。
でも、これまでは一生懸命がんばってきたのに、今になってなぜ悲しいのだろう、自分は変じゃないのか?そう、思われるかもしれませんね。

つらい経験のあとに、がんばって日々毎日過ごしてきた人の中に、その悲しみが、つらい経験から時を経て、遅れてやって来る人がいます。私たちはこれを「遅れる悲嘆」(遅延悲嘆)と呼んだりします。なぜ悲しみが遅れて来るのか、まだ正確なことはわかっていませんが、つらい経験のあとにがんばっていることが多いと、知らず知らずのうちにつらいときの感情を無理に抑えるようになって、物事に対処することが多いから、という説があります。ハコちゃんさんのように、子育てが一段落したあとは、むしろそういう思いが出やすくなるかもしれません。

むしろ今は、ご自分の感情を見つめながら、泣いたり、ご家族と話し合ったりすることが今は役にたつかもしれません。ご家族には話しづらいというときは、流死産経験者の自助グループの集まりなどを利用して、今の感情や気持ちを話してみることもできるかもしれません。自責の念は、無理に消そうとしたり、なにかで対処しようとせずに、ご自分の今の感情の流れを見つめ、その流れに身を委ねることで変わる可能性があります。その上で、少し気持ちが落ち着いたり、自分で動けるようになったら、他の人とのつながりについて考えてもいいかもしれません。その時に例えばボランティアとかドナー登録など、いろいろと可能性が出てくることもあるかもしれません。

ただこうした気持ちの流れは、あちこちに(飛び飛びのように)変化するかもしれません。一方向的によくなるように向かうとは限りません。例えば一度ボランティアに出たいと思っても、しばらくすると、また悲しみが起きたり、不眠になったり、気になることが出て来たりします。気持ちの流れは一方向ではなくいろいろな感情があるということですね。これがむしろ自然なグリーフ(悲しみ、悲嘆)の流れというものです。

何より大切なのは、そうした「今、ここで」起こっている気持ちを大切に、そして気持ちに正直に過ごす、ということです。
気持ち・感情に向き合い、これとともに過ごしてみましょう。
つらいときはいっぱい泣いてみましょう。これが自然な感情です。

ここで一つ質問です。ハコちゃんさんは、つらい経験をした親友が「つらい」と話したときに、その親友にどういう言葉を語って、どう接しますか?恐らく気持ちの優しい
ハコちゃんさんなら、「どうしたの?よかったら私に話してみて?」と優しく問いかけ、親友に心から寄り添うことでしょう。

まさにそれをご自分に向けてするように、ご自分のことを慈しむように、ご自分に優しく接して過ごしてみてはいかがでしょうか?そうして出てくる(おそらくは苦しい)気持ちを、今度は誰かに話してみることもいいかもしれません。このように行きつ戻りつしながらも、もしも少し落ち着いたら、次のことを考えることも役にたつかもしれませんね。でもあくまでご無理のない程度で・・・
決して今はがんばらずに。

強くならなくてもいいんです。むしろご自分の気持ちに気づき、優しく向き合いませんか?

それでもさらに眠れずに、つらい日々が続くのであれば、トラウマの専門家にご相談になるのも一つのやり方です。

日本EMDR学会はEMDRというトラウマ治療法の専門家の学会です。ここがEMDRの治療者リストを公開しています。EMDRを適用できるかどうかはいくつかの条件がありますので、お近くの治療者に直接お問い合わせ下さい。
https://www.emdr.jp/

ハコちゃんさんのお気持ちが安らかになる日が、また訪れますことを、心から願っております。

 

相談者:ハコちゃん 様
回答者 富田 拓郎