HOME > 稽留流産で自然排出しました。不妊治療の末ようやく宿った命でした。付き添ってくれた夫も単身赴任先に帰り、突然涙が出てきました。それからはスイッチが切り替わるように突然悲しくなったり攻撃的になったり。自分の心がわかりません。

稽留流産で自然排出しました。不妊治療の末ようやく宿った命でした。付き添ってくれた夫も単身赴任先に帰り、突然涙が出てきました。それからはスイッチが切り替わるように突然悲しくなったり攻撃的になったり。自分の心がわかりません。

【 相談内容 】

2週間前稽留流産の診断を受け、数日前に自然排出しました。
9週目5日、それまで順調に育っていて、本当に急な事でした。

2週間悲しみはあったもののつわりも酷く、排出時も緊急入院になる程の激痛と出血でしたので、心のどこかで自分を優先する思いがあったのだと思います。
朦朧としている間に看護師さんが回収してくださったので、私自身は赤ちゃんの姿を見る事なくはじめての妊娠が終わりました。

単頸双角子宮と診断され、2年半の不妊治療の末ようやく宿った命でした。
退院時仕事を休んで付き添ってくれた夫も単身赴任先へ帰りひとりになってしばらくして、突然涙が出てきました。
それからはスイッチが切り替わるように突然悲しくなったり攻撃的になったり。
友人も見るTwitterに悲しみの気持ちを連投してしまい、自己嫌悪に陥り1日経って消しました。

何で誰も私を助けてくれないの、と理不尽な感情が湧き上がり、やがてこうやって人の気持ちも考えず自分の感情ばかり吐露してしまう私は誰からも必要とされていないのではないか、死ぬべきではないかと深く考えるようになりました。
しかしそういった気持ちも突然スイッチが切り替わるように霧散してしまいます。

自分の心がわかりません。
亡くなった赤ちゃんへの悲しみよりも自分の辛い経験に誰かに同情してもらいたい気持ちが強い気がして、どうしようもない人間だと思います。
私が子供のような人間だから、人の気持ちがわからないから、母親になる資格がなかったから赤ちゃんは私のお腹から去ってしまったのではないか、子宮奇形での妊娠リスクを甘く見ていたのではないか。
線香をあげ赤ちゃんにかける言葉は「ごめんね」しか思い浮かびません。

結局自分本位な妊娠だった、薄情な親だったのではないかと自責の念が浮かびます。
こんな文章しか思い浮かばない時点でやはり私はどうしようもない人間ではないかと…。

私はおかしいでしょうか。
どうすれば強くなれるでしょうか。
夫は悲しみの中立派に仕事をしているのに、スイッチが入ると何の配慮もなく「死にたい」「辛い」と自分本位なLINEばかり送ってしまいます。

しかしその時はそれがおかしいことに気づきません。
今回の妊娠にかかった費用も高額で、通院のため仕事も辞めさせてもらっていたため、夫のお金を食いつぶしてしまった感覚も拭えません。
いろんな感情が押し寄せてきて一人で抱えきれず、かといって話し相手は単身赴任先にいる主人しかおらず。

もうどうしていいかわかりません…。
頭がどんどんおかしくなっていくような気がして、思い切ってこちらのサイトを使わせていただきました。
読みづらい文章で大変申し訳ありません。

【 回 答 】

マリーさん
哀しみの真只中で、お気持ちをお聞かせくださって有難うございます。
マリーさんに起きた出来事、ご心情が深く伝わって参りました。

私の稽留流産の経験からは、長い時が過ぎましたが、マリーさんの経験をお聞きするうちに、8週目で心音が聞こえなくなり、それから2週間後に手術でお別れをするまでの日々が蘇って参りました。時代は大きく変わり、’いのち’と出会うための医療技術も急速に進化していますが、’ママ’の哀しみに変わりがないことに気付かされます。
よろしければ、ご一緒にマリーさんの出来事やお気持ちを振り返らせてください。
ここからは’医療’の言葉ではなく、’いのち’の言葉でお話をさせてください。

今、マリーさんは’いのち’とのお別れという哀しみの真只中。
嵐の海を漂う舟のよう―こころの嵐が吹き荒れることは自然なことです。
今までに経験したこともないような激しい感情が、マリーさんのこころを揺さぶります。
共通の経験をした方の多くが直面する心情です。
このような嵐の中で、「ポコズママの会 WEB相談室」にお気持ちを打ち明けてくださったマリーさんは、とても聡明な行動ができる方であることが伝わります。
「聴いて!」とサインを出すことは、とても大切なことだと思います。

マリーさんのパートナーは、単身赴任中でいらっしゃるのですね。
哀しみを身近にわかちあう人がいない、その寂しさはいかばかりか―。
今回、マリーさんとパートナーを’ママ’と’パパ’としてひとつの’いのち’が誕生されました。
その’いのち’と出会うまでに、長い時をかけて来られたのですね。
医療と繋がることで、マリーさんの子宮は形態に特徴があることがわかり、医療の技術を得ることで妊娠への道が通じることを信じて、努力を続けてこられます。(その意味で、私は、’不妊治療’と呼ばず、希望に向かう’妊娠治療’と言わせていただきます。)
2年半の歳月は、いろいろな出来事や決断の連続だったことでしょう。’妊娠治療’の選択は、マリーさんとパートナーの希望が一致しなければ踏み出せなかったことであると思います。今はお仕事の都合で離れて暮らしていますが、緊急事態には駆けつけ、寄り添って同じ時を過ごすことができるご夫婦です。

妊娠9週—それは、エコーで出会う’いのち’。
ようやく心音が聞けたという頃でしょうか。

ひとつの’いのち’が時々刻々生き続ける旅路を、私たちも最新科学の情報で知ることが出来る時代になりました。
マリーさんの子宮は、胎盤を通して、栄養や酸素を’赤ちゃん’に届け、「ミクロの会話」を重ねながら’いのち’を育み続けたのです。
それは、本当に’奇跡’のような時間—。
でも、「まさかこんなことが—」という、突然のお別れ。
続くつわり、激痛と出血は、子宮の中の’赤ちゃん’がその生涯をかけて、マリーさんの子宮を守り続けた証です。手術という方法ではなく、自然なお別れで、少しでもマリーさんの子宮を守れますように。未来のきょうだいが居心地よく暮らせますように—と、そんなメッセージが伝わってくる気が致します。

‘赤ちゃん’との突然のお別れを経験した直後、私たちは、原因を探りたいという気持ちに突き動かされます。自分を責めることでしか、このお別れの意味を見出せないような気持ちに襲われます。
それは、母としてのこころの悲鳴—自然な感情であると思います。
でも、ひとりで抱え続けるには重すぎる、複雑な感情です。
マリーさんは、言葉にすることは難しいことも多い、このような深い感情を言葉にして表出することができる方です。

いつになったらおさまるのか…その道程はひとりひとり違っています。
もし、マリーさんが、共通の経験をした人と哀しみをわかちあいたいという気持ちがある時は、住む街のほど近くにそのような場があるようでしたら、どうぞ、仲間と共に気持ちを言葉になさってください。幾度でも―。

「死にたい」「辛い」。
死にたいほどの辛さを受け止めてほしいという感情は、時に理性を越えた言葉を発します。
パートナーへの深い信頼があるからこその言葉にも思われます。
LINEが届くことは、今もマリーさんが生きている証。
パートナーは、懐深く、マリーさんの心情を受け止め、社会生活を営むことができる力のある方ですね。
実はパートナーも’いのち’とのお別れに深く傷つき、妻や子のために何ができるのかを問い続けているものです。
自分のことで精一杯のパートナーですと、子どもとのお別れや揺れ続ける妻の傍らにいることさえ、耐えることができない人もなくはありません。

感情の嵐が吹き荒れる今—マリーさんとパートナーは、ひとつ舟にパートナーは静かに櫓をこぎ続け、悲嘆にくれるマリーさんの傍らで見守っているイメージが、私には湧いて参りました。
これまでマリーさんたちは、共に働きながら、医療の応援を得て、親になる希望に向かって歩まれました。マリーさんの通院を優先するために、パートナーが生計を担う選択をなさいました。「費用も高額で」。そうだったのですね。
それは、お二人の’いのち’が宿り、9週間育ち続けるために必要なことだったのではなでしょうか。
そして、その’いのち’は9週間で心音を停止しましたが、2週間に渡り、マリーさんの子宮を元通りに整えていく大仕事をやり遂げました。

素敵な’ママ’’パパ’—ありがとう。
お二人の’赤ちゃん’からそんなメッセージが届いた気持ちが致します。

昨今の妊娠・出産は、医療技術の手助けを得ながら進んで参りますので、多くが’医療’の言葉で語られていきます。でも、子宮の中で育っていた’いのち’の物語は、’ママと’’パパ’だけが知っています。今、この日本では、戸籍に載らない’いのち’のことは、他者に気付かれることがありません。腕に抱く子がいなくても、ひとつの’いのち’の親であったことを伝える場がありません。マリーさんの哀しみのなかには、’いのち’とのお別れだけではなく、この社会がすべての’いのち’を尊重しあうことを知らないのではないかという嘆きが、新たに滲んでいるかもしれません。
でも、絶望しないでくださいね。
すべての’いのち’を尊重しあう社会は、その大切さを知る人たちが、新しく創造していかなければならないものなのではないかと思うのです。

「ごめんね」。
マリーさんのお気持ちは、お空の赤ちゃんに届いていることでしょう。
ご無理はなさらず、ありのままの言葉でお話ください。
でも、安心してお話できる安全な環境で―。
いつかマリーさんからも「ありがとう」という言葉がこぼれだすかもしれません。

マリーさんとパートナーは、ひとつの’いのち’のママとパパ。
そして、いのちのかけがえのなさを知る人。
ご自分を大切に生きて続けてください。

相談者:マリー様
回答者:田村芳香