HOME > 16週で死産しました。上の子の保育園を、産後休暇中に通わせてよいのか不安です。保育園には妊娠、死産、産後休暇は伝えていません。死産届は提出しましたが、母子手帳の発行箇所や、保育課に連絡した方がよいのでしょうか。正直に報告して保育園に通えなくなると困ってしまいます。

16週で死産しました。上の子の保育園を、産後休暇中に通わせてよいのか不安です。保育園には妊娠、死産、産後休暇は伝えていません。死産届は提出しましたが、母子手帳の発行箇所や、保育課に連絡した方がよいのでしょうか。正直に報告して保育園に通えなくなると困ってしまいます。

【 相談内容 】

先月末に、16週で男の子を死産しました。
今は、感情の波がありますが、産後休暇を使ってゆっくりと過ごしています。
まだ今回のことを受け止めきれず、何事もなかなか手につかずです。

そして今、心配していることがあり、相談させて頂きました。
上に3歳の女の子がいて保育園に通っています。産後休暇中に、保育園に通い続けていて、よいのか分からず不安になっています。
まだ保育園には、妊娠していたことはもちろん死産してしまい、産後休暇をとっていることについて伝えていません。

役所での手続きは、主人が死産届を提出してくれました。その他の手続きは分からなかったため、まだ行っていません。
私としては、役所の母子手帳の発行箇所に死産の連絡をした方がよいのか。保育園を管轄している保育課に連絡をした方がよいのか。など考えています。

この件について、主人や実母、義母にも相談したのですが、皆揃ってわざわざ報告することはないのでは?報告して有利になることはないでしょ?という意見でした。
実際、正直に報告して上の子が保育園に通えなくなってしまうと大変困るのですが、手続きとしてどのようにするのがよいのか、教えて頂けると幸いです。

【 回 答 】

16週、共に過ごしたいのちとのお別れからまもなく1ヶ月。
大切な、大切ないのちとのお別れという経験をなさったのですから、さまざまな想いで揺らぐ日々であることは、とても自然なことだと思います。
それは、ぴんくさんが一日一日を精一杯生きているということ。
「まさか、こんなことが―」という出来事が起きたのです。
対処に戸惑うことの連続に違いありません。

死産届は、パートナー様が役所に提出をされたとのこと。
日本での行政手続きはこれがすべてです。

[参考]妊娠第12週以降の胎児を死産(流産、中絶も含む)した場合、その日から7日以内に、届出人の所在地、死産のあった場所いずれかのある役所へ、死産届を提出しなければいけません。[戸籍法 第65条]

それ以外の行政的な手続きや関わりは、住む街によって違いがある時代を迎えています。
例えば、妊娠から出産・子育てまで、切れ目のない支援を導入している市町村では、母子手帳の発行が単に事務手続きではなくて、出産前から妊婦さんとの’関係づくり’を重視しているかもしれません。

でも、まだほとんどの市町村は、死産届以外の手続きや報告を受け付ける体制はないのではないかと思います。
また、死産届の情報が、母子保健の担当部署に連動していることもないのが一般的だと思いますので、’乳児家庭全戸訪問事業(こんにちはあかちゃん事業)’の問合せが、死産をされた方にもきて、傷ついてしまう…ということもあり得るかもしれません。

[参考]児童福祉法の一部を改正する法律(平成28年)により、「市町村は、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を提供する『子育て世代包括支援センター』を設置するよう努めるものとする。」と定められましたが、現実には市町村の違いも大きいですし、「いのちとのおわかれ」の経験を受け止められる体制でもないのではないかと推察しています。

今、ぴんくさんは「産後休暇をとってゆっくり過ごしている」と伺い、少しホッとしました。
すでにお調べのことと思いますが、いのちを宿したからだを休める、母体保護のため8週間の産後休暇が認められています。6週間は強制休業です。

また、出産育児一時金の給付も受けることができます。
ぴんくさんは、すでに産後休暇を取得されていますから、勤務先にもお届けができていると思われます。

[参考]8週間の産後休暇とは、出産の翌日から数えて8週間をいい、この期間を経過しない女性労働者を就業させてはいけないと決められています。出産とは「妊娠4か月以上経過した場合の分娩」をいい、4ヶ月経過後の死産、人工流産も含まれます。

さて、長女さんは保育園に通園をされているので、産後休暇中の対応を心配されています。
保育要件には「出産」も規程されています。
某市では、「産前産後各8週間(出産予定日の56日前の日が属する月の初日から産後56日に当たる日が属する月の末日までの期間)※産後56日に当たる日が属する月の末日で退所となります。」のように規程されています。

現在では、無事に出産をされて、育児休業を取得された場合は、保育要件が変わるとして、産後休暇が育児休業に切り替わる時点で退園が定められる市町村もありますし、比較的緩やかな市町村もあるのではないかと思われます。

ぴんくさんは、今回も母子手帳を取得されていると思いますが、ご自身が申請されない以上、自動的に保育要件の変更として役所が認識することはないことが通例ではないかと思います。
今、ぴんくさんの妊娠、赤ちゃんとのお別れは、ぴんくさんのご家族だけが知る出来事ですので、このままであっても構わないともいえます。

では、ぴんくさんの心配は、本当のところどのようなところに根ざしているでしょうか。

例えば、長女さんは、もう言葉でいろいろなお話ができるでしょうから、ママに起こった出来事や行動を三歳児なりに見て、考えているかもしれません。
「ママはおうちにいるの」とか、「ママが泣いていたの」とか、お子様の言葉が保育士さんに届けられた時のご心配とかはございますか?

あるいは、ご自宅で療養されていることを事情を知らない方が、「休んでいるのに、保育園に通園している」という不信感を向けられるのではないかと不安になられることがおありでしょうか?
そのようなご不安を抱えていらっしゃるようでしたら、「保育園を管轄している保育課」へは、死産を届けるというより、次子の産後休暇中の保育について確認をすることもあり…なのかもしれません。前述のように、産前産後休暇は保育要件であり、退園を迫られることはないことは確認できるでしょう。

でも、保育園ママの死産は、別の苦しみを抱えてしまい辛いという方も多くいらっしゃいます。
同じ時期に妊娠された方が、順調にご出産される様子を間近に見続けることが、精神的な苦痛になる方など…。
そのような場合は、ご自分から赤ちゃんとお別れした出来事のことを他者に伝えることは、本当に辛いこと。

ぴんくさんは、周囲の方が「報告して有利なことはない」という言葉が、ガラスの向こうからの声のように聞こえているのでは…とも思います。
ぴんくさんは、「報告」という言葉では、伝えきれない、さまざまな感情に苛まれて、ただ哀しいことを哀しいと思うこともできない時を過ごしているかもしれません。

例えば、長女様のご様子が心配で、先生方にも見守ってほしいというお気持ちがあるとしたら…。
ご家庭にあった出来事や産後休暇中であることを園長先生にお伝えして、見守りのお願いをされることも大切な過程かもしれません。

また、ぴんくさんが産後休暇中に保育園の送迎にいくことにも精神的苦痛がある場合は、パートナーや周囲の人や他者に頼むということがあっても良いかもしれません。今は、特別の時間なのですから。

このように、ぴんくさんは、「届出」という手続きを求めているのではなく、「いのちとのおわかれ」という経験に対して、共感を伴った関わりを求めていらっしゃるように、私には感じられます。
それは、この経験をした人であれば、誰もが願うこと。

でも、身の回りに、同じ経験をした人がいなければ、共感を伴った、響きあう言葉にならないことも多いものです。
同じ女性であっても。親子であっても。

ぴんくさんは、これからお仕事を再開する予定もおありと思います。
身体的なことはもちろんですが、精神的にもどのくらいの療養期間が必要なのかは、個人差があります。

もし、勤務先の総務部や産業医さん等に相談ができ、職場の協力も得られるようでしたら、ぴんくさんとして職場復帰に必要な期間をご相談してみることも良いのではないかと思います。(職務によっては、精神的な安定が重要視されることもありますので。)

そして、「いのちとのおわかれ」の経験をした方の会などが、お近くにあるのでしたら、出向いて心置きなく気持ちを語ることも、大切になさってください。

最後に、ぴんくさんが感じているさまざまな心配事は、この日本という国だから起きることもあるのではないかと、私は思うのです。
「いのちとのおわかれ」という深い経験が、いきなり「死産届」になるのです。

ぴんくさんとパートナーの大切な第二胎、長女さんのはじめてのきょうだいが、16週間生きたこと。
それは、ぴんくさんの大切な「ファミリー・ヒストリー」ですが、その証が何も残されない国であること。
「戸籍」に載らなければ、社会的な存在証明は何もないこと。

すべてのいのちの存在を尊重しあうからこそ、喪失の哀しみも分かちあうことができるのではないかと思うのです。

このように、いのちのかけがえのなさを深く知った人にとっては、喪失の哀しさ以上に、社会からも排除されたような哀しさが加わっていくように思えてなりません。
このように、ない、ない尽くしではありますが…。

ぴんくさんとご家族が、二つ目のいのちのかけがえのなさを安心して語り合える日々でありますように。
ぴんくさんが、共通の経験を知る仲間と良き語らいがてきる機会もありますように。
心より願っております。

相談者:ぴんく様
回答者:田村 芳香