HOME > 30週で死産をしました。その前に10週流産も経験しています。来月復帰予定ですが、仕事内容が妊婦さんや赤ちゃんにかかわる仕事です。黒い感情は抱きたくないので必死です。

30週で死産をしました。その前に10週流産も経験しています。来月復帰予定ですが、仕事内容が妊婦さんや赤ちゃんにかかわる仕事です。黒い感情は抱きたくないので必死です。

【 相談内容 】

妊娠30週で死産をしました。
その前に10週流産も経験しています。夫婦で念願の第1子でした。

来月復職予定ですが、仕事内容が、妊婦さんや赤ちゃんに関わる仕事です。望まない妊娠、虐待などにも関わります。職場の人間関係が良いこと、金銭面のこともあり、仕事を続けたいとは思いますが、自分の心が保てるのか不安です。

いまはノートに、「妊婦さんを見たらこうやって考える」「赤ちゃんを見て辛くなったらこうやって思うようにする」といった内容をまとめて、自分の心が仕事中に折れないように思考トレーニング?をしています。他の妊婦さんや赤ちゃんに対して、黒い感情は抱きたくないので必死です。辛くなったら遺骨ペンダントを握りしめる、息子の写真を見る、というのもしようと思っています。

職場からは、休職を延ばしてもいいと言われていますが、延ばしたところでいつか復職しなければならないので悩んでいます。
話がまとまらずにすみません。妊婦さんや赤ちゃんがいる職場への、死産後の復帰について、今できることや復帰後できることでご助言があればいただきたく思います。
よろしくお願い致します。

【 回 答 】

さやか様

さやかさんは、ふたつの’いのち’を宿されたお母様でいらっしゃるのですね。
たとえ数週間であっても、かけがえのない’いのち’の「親」であると、私は考えます。

私たちの国では、戸籍に載ることがない子どもにも、’いのち’を育んだ日々があったことがあまり大切にされていません。

さやかさんは、’いのち’と向き合う最前線でお仕事をなさっているのですね。
人生を支えてくれる人がいてこそ、どのような境遇にある方も、’いのち’の重みを受け止め、現実に向き合うことができるのだと思います。
大切に、大切に続けていただきたいと、心から願っています。

これからのお話は、出来れば、小さな’いのち’とのお別れを経験した者同士として、私もさやかさんと向き合い、直に言葉を交わしたいです。
でも、今はそれが叶いません。せめて時空を越え、同じ経験をしたピア(仲間)のこころでお話したいと思います。

哀しいことは哀しいこと。辛いことは辛いこと。
私たちは、自分のこころの動きを素直にみつめて良いのだと思います。

でも、共通の経験をした者同士でなければ癒されない出来事もあります。
小さな’いのち’とのお別れは、そのような深い出来事なのではないでしょうか。

ですから、さやかさんも思いきり哀しみ、辛いことは辛いと吐き出すことができる関係や場を大切になさってください。
そのような時を重ねることで、さやかさんのなかに「ふたつの’いのち’を宿されたお母様」の気持ちが湧き上がってくるのではないでしょうか。
決して急ぐことはありません。

こころからの「気付き」を通して、大切な想いが芽吹いていくと感じます。
さやかさんのお近くにビア(仲間)と出会える場があれば、ぜひ一度、ご自分の気持ちを言葉にする時間を持っていただきたいなぁと願っています。

さやかさんは、ふたつの’いのち’を宿されたお母様。
お仕事で出会う方々は、’いのち’を宿した経験を持つ仲間(ピア)たち。

かけがえのない’いのち’の意味を知るさやかさんの言葉は、きっと相談者様に響いていくと思えます。

でも、他者の人生に寄り添う仕事は、自分の課題と向き合うしんどさやこころの揺らぎを抱え続けるものです。
キャリアを深めるためのスーパービジョンと赤ちゃんとのお別れという経験と向き合うためのピアスーパービジョンのふたつの環境を整え、専門職としての自己、生活者としての自己と向き合い続けることができたら、生涯をかける価値のあるライフワークとなるのではないでしょうか。

お子様たちがママとの哀しいお別れをしてまで伝えてくれるメッセージは、それほどまでに深いものではないかと、私には思えるのです。

「ありのまま」でよいのではないでしょうか?
「黒い感情」があっても自然なことではないでしょうか。

ただ、黒い・白い、良い・悪いという二分法の価値観からも解放されて良いのではありませんか?
「なぜ、私は、大切な子どもたちを腕に抱き続けることはできなかったの?」
哀しい気持ちは、消そうと思っても消えるものではありません。
哀しいことを哀しいと感じながらも、今日を生きていく。

気持ちが揺れて、ジタバタしても良いのではないでしょうか。
それは、まっすぐに自分の気持ちと向き合っている証です。
こころが折れそうなこと、折れてもよいのではないでしょうか?
折れてもいいなんて、乱暴でしょうか。

「レジリエンス」という言葉があり、「折れないこころ」と訳されることもあります。
辛い体験を潜った方が「折れても良い。例えば、骨折した骨が繋がるように、なくした細胞を別の細胞がカバーしていくように。折れても、失っても恢復する力を人間は持っている」と教えてくれました。

折れても、折れても、立ち直ろうとする’いのち’の灯を支え続ける。
他者の人生に寄り添うという仕事の深さはそのようなことにあるのではないでしょうか。
どうぞご自分の感情を閉ざさず、決してひとりで抱え込まず、向き合い続けてください。

ふたつの’いのち’のお母様であるさやかさんは、誰よりも深く’いのち’のかけがえのなさを知る人として、他者に向き合っていけると思うのです。
何よりも、息子さんの’いのち’のペンダントが、いつもさやかさんを見守っています。

それから―。

ふたつの’いのち’とのお別れは、「なぜ」と問うても答えが返ってこないことですが―。
今の時代は、時には医学の力も借りて、自分の身体の状態も調べておくということにも意味があると考えています。
「調べてみたら、原因になることが見つかった」という方もいます。
もし、休職期間の延長ができるとしたら、新しい未来のための環境調整に時間を使うことをお勧めしたいです。
ピア(仲間)やパートナーとの語らい。
からだのチェック。
お空の天使となったお子様たちをいつも近くに感じるような生活のしつらえ。
未来の妊娠・出産・子育てと仕事の両立のためのライフスタイルの見直し。少しゆるゆるの。
ご自分のことにたっぷりと時間をかけてみてはいかがでしょう。ケアに関わる人には、セルフケアがとても大切です。
準備が整ったらGoでよいのでは?

人生100年時代と言われています。
大切に、大切に、さやかさんらしいライフとワークの両立を目指してください。

相談者:さやか様
回答者:田村 芳香